漂う嫌悪、彷徨う感情。

「小田さんって分かり易いから、部署の全員が気付いてたと思う。 佐藤だって当然勘付いてただろ?? 小田さんが佐藤に気がある事くらい。 分かってて寄りかかったんだろ?? 精神的に参って誰かに甘えたくなった佐藤の気持ちも分かるけどさ、小田さんの事その気にさせておいて『もう気が済んだから関わらないで』っていうのはあんまりだと思う」

岡本の言う通り、小田さんが自分に好意を持っている事は何となく分かっていた。 オレを好きでいる小田さんなら、落ち込むオレに優しく接してくれるだろうと思った。 だから昨日、甘えてしまった。 でもそれ以上、小田さんの気持ちを利用して付け込んでやろうなんて考えはなかった。 実際、小田さんの肩を借りて、そこに頭を乗せて髪を撫でてもらっただけだ。 それが、オレの甘さなのだろう。

「・・・それは悪かったと思うよ。 だけど、岡本だって『甘えちゃえば??』ってオレの事のせたじゃん」

「まぁ、そうだけど。 オレ、小田さん、いい子だと思うよ。 みんなの前で平気で佐藤を傷つける木原さんなんかより、小田さんの方が絶対にいいと思う。 自分を好きでいてくれる人と一緒にいる方が幸せになれると思うけどな、オレは」

岡本の助言は、オレを思っての事だという事は分かる。 この状況で岡本がそう思うのも無理はないとも思う。 でも『木原さんなんか』って・・・。

岡本に、美紗を下げられながら小田さんをお勧めされていると、
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