漂う嫌悪、彷徨う感情。
日下さんがワタシのアパートの前まで車で迎えに来てくれ、日下さんの運転で温泉に向かう。
温泉まで車で2時間。
途中で運転を交代したい気持ちはあるのだが・・・。
「すみません。 完全にペーパーなので、日下さんにばかり負担が掛かってしまいまして・・・」
教習所で運転して以来1度もハンドルを握っていない為、『免許証、返還した方が良いんじゃないの??』くらいの腕前に違いなく、頭を下げながらも、しっかりとちゃっかりと助手席のシートベルトを締めた。
「別にいいよ。 オレ、運転好きだし。 温泉入る前に死にたくないし」
日下さんが笑いながらワタシの頭を『ポンポン』と撫で、『では、行きますか』とエンジンをかけた。
「あ!! 待って下さい。 先にワタシの分の旅館代お渡しします」
ハンドルを切ろうとする日下さんの手を止め、予め封筒に入れていたお金を鞄から取り出し、日下さんに渡そうするが、
「いいよ。 いらないよ。 美紗ちゃんは、オレの突然の思い付きに付き合ってくれたわけだから、美紗ちゃんに支払わせるわけにはいかない」
日下さんは受け取ろうとしない。