漂う嫌悪、彷徨う感情。
「そんなの困りますよ!! 奢ってもらうわけにいかないですよ!! 千円二千円じゃないんですから!!」
それでも日下さんに無理矢理封筒を突き出すと、
「もー!! 美紗ちゃん、手、邪魔!! 運転出来ないでしょうが!! おとなしくしててよ。 美紗ちゃん、運転出来ないんだから」
日下さんが嫌味を言いながら、ワタシの手を押し戻した。
「イヤ、でも!!」
「うるさーい!! 手、縛り付けるよ!!」
一向に引き下がらないワタシに、日下さんが駄々を捏ねる子どもを叱る母親のように大きな声を出すと、『本当にもう出発しないと、予定時刻に着かないから!!』と車を発進させた。
運転出来もしないワタシが言うのもなんだが、事故でも起こされたら大変なので、『旅館に到着したら必ず渡そう』と押し返された封筒を鞄の中に片した。