漂う嫌悪、彷徨う感情。
旅館までの道中は、滅茶苦茶楽しかった。
旅館で豪華海鮮料理が待っているというのに、道の駅に立ち寄ってコロッケ食べてみたり、偶然目に入った神社にお参りに行ったり、車内で似ても似つかないモノマネをしながら歌を熱唱してみたり。
笑いに笑った。 声を出して笑ったのはいつぶりだろう。
自分が企て実行している事とはいえ、会社での日々は結構辛く、精神的に参っていた為、ずっと今日の日を楽しみに過ごしていた。
だからだろうか。 余計に楽しい。 今日と明日だけは、現実から目を背け大いに満喫したい。
旅行に来て良かった。
2時間はあっと言う間に過ぎ、寄り道しすぎたワタシたちは、予定到着時間を少し過ぎてから旅館に着いた。
「ようこそお越しくださいました」
そんなワタシたちを笑顔で迎えてくれる仲居さん。
「遅れてすみません」
日下さんと一緒に頭を下げると、
「いえいえ。 そんな事は気になさらないでください。 お荷物、お持ちいたします」
仲居さんは嫌な顔ひとつせず、ワタシたちの荷物を持つと、予約した部屋に案内してくれた。