漂う嫌悪、彷徨う感情。

仲居さんの後ろを歩きながら、何気なくロビーの方に目を向けた時、

「・・・・・・え」

ここにいるはずもない人物の姿が目に入った。 その人もこっちを見ている。 

「美紗ちゃん??」

思わず立ち止まってしまったワタシの視線の先を、日下さんが追った。

「・・・すみません。 荷物、先に部屋に持って行っておいて頂けますか?? ちょっと・・・偶然知り合いに出くわしまして」

仲居さんにそう言うと、顔を歪ませた日下さんが、ロビーに向かって歩き出した。

仲居さんに『すみません』と会釈をして、慌てて日下さんの後を追う。

「・・・なんでここにいるんですか?? 佐藤さん」

少し苛立った日下さんが、ロビーにあったソファーに座っている勇太くんに声を掛けた。
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