漂う嫌悪、彷徨う感情。
「・・・肩を貸して頂けませんか?? ここから離れた所で話します」
本当は2つ共拒否したい選択肢。 それが出来ないのなら、ワタシが選べるのは後者しかなかった。
肩さえ貸してもらえれば、何とか歩ける。
兎に角、兎に角、是が非でも遠くへ。
「肩は貸しません。 背中を貸します。 乗って」
日下さんはワタシの前で背を向けてかがむと、『おいでおいで』と手招きをした。
「大丈夫です。 歩けますから」
さすがにおんぶしてもらうのは忍びないし、いい歳をして恥ずかしい。
やんわり断るも、
「早くしないとあの家から誰か出て来ちゃうかもよ。 見つかりたくないんじゃないの??」
日下さんは『早く乗って』とワタシを急かした。
『早くしないとあの家から誰かが来る』日下さんの言葉に、背中がゾクっとした。
「すみません。 お言葉に甘えます。 重いのに申し訳ないです」
そっと日下さんの背中に身体を預けると、
「オレ、女の子おぶれないほど軟弱じゃないんんで」
日下さんはワタシを持ち上げて腰を起こすと、
「しっかり掴まっててね。 ダッシュするよ!!」
と言って走り出した。