漂う嫌悪、彷徨う感情。
しかし2分後くらいに突然自販機の前で足を止める日下さん。
「この近くに公園があるんだけどね、話はそこで聞こうと思うんだけど、その前に何か飲みもの買ってからにしようよ。 どれ飲みたい??」
日下さんは『好きなの選んで』と言いながら、ワタシを降ろす事なく、自分のお尻のポケットに器用に片手を入れると、財布を取り出し、自販機にお金を入れた。
「・・・じゃあ、お水を頂けますか??」
「じゃ、水とコーヒーのボタン押して。 あ、ブラックね」
しかし、ボタンはワタシに押させる日下さん。
おんぶされながら自販機のボタンを押すのは子どもの頃以来で、懐かしくて、ちょっと楽しかった。
更には、
「悪いけど、持っててくれる??」
と、背中をかがめて出てきた飲み物をワタシに取り出させると、そのままそれをワタシに持たせる日下さん。
「ふふふ」
日下さんが、子どもに初めて自販機に触れさせる親の様に見えて、思わず笑ってしまった。