漂う嫌悪、彷徨う感情。
「このままバイバイじゃ味気ないから、最後に握手しない??」
日下さんがシャツで手汗を拭く仕草をした後、右手を差し出した。
その手を両手で包むと、
「頑張ってね。 美紗ちゃん」
と日下さんが左手を添えた。
「はい」
返事をしながら頷くと、
「疲れたでしょ?? もう部屋に入りな。 じゃあね、美紗ちゃん」
日下さんがワタシに握られた手をスルリと抜き取り、助手席のドアを開けた。
車を降りて手を振ると、日下さんも笑顔で手を振り返して去って行った。
小さくなっていく車を見ながら、涙が出た。
旅行が終わってしまった事の淋しさと、日下さんへの感謝で胸がいっぱいで。
日下さんに好きだと言ってもらえた事はきっと、ワタシの自慢になり、自信になり、心の糧になるだろう。