漂う嫌悪、彷徨う感情。

「だったら出て行け!! いい大人になって、金も入れずに実家でぬくぬくしてるんじゃない!!」

オトンが真琴の手首を掴み、リビングから追い出そうとした。

家に生活費も入れない上に、貯金もせずに毎月の給料を綺麗に使い切る真琴が実家を出ていけるはずもない。

「痛い!! さっきから何なの?!! 『暴力はいけない』って言ってたくせに、振るいまくりじゃん!! 嘘吐きジジイが!!」

オトンの手を振り払おうと、真琴が大暴れしていると、玄関のベルが鳴った。

「和馬だ!! いいよ、出てってあげるよ!! 和馬と一緒に暮らすから!! ホラ、出てくって言ってるんだから放せよ」

彼氏とデートの約束をしていた真琴は、彼氏が迎えに来た事をいい事に、オトンに悪態を吐くと『嫌だー。 顔ボロボロ』などと言いながら玄関に駆けて行った。
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