漂う嫌悪、彷徨う感情。
「気にしないでください。 別れた彼女の家に入るっていうのも、オレ的に抵抗があるので」
『頭を上げてください』と和馬がオレの肩を『ポンポン』と叩いた。
顔を上げると、苦笑いを浮かべる和馬と目が合って、自ずとオレの顔もしょっぱく歪んだ。
「本当にすみません。 ウチのどうしようもない妹が・・・」
最早、オレの口からは謝罪の言葉以外出てこない。
「・・・さっき、美紗ちゃんに会って話した時に聞かれたんです。 『真琴ちゃんのどこが好きですか??』って」
和馬がオレのどうしようもない妹の話をし出した。
「真琴の勝気なところも活発なところも好きでした。 一緒にいて楽しかった。 オレには優しかったですし。 美紗ちゃんから真琴のいじめの話を聞いた時、正直『ホントかな??』って疑ったし、本当だったとしても今の真琴は昔とは違うんだからって思ってました。 ここに来るまでは、真琴と別れる気なんかサラサラなかった」
真琴が上って行った階段を見つめる和馬。
別れを切り出したのは和馬だが、さっきの出来事は和馬にとっても急転直下だったらしい。