漂う嫌悪、彷徨う感情。
「美紗ちゃんが言ってたんです。 『結婚出来ないって言って逃げてきてしまった』って。 オレ、『なんで?!』って咎めたんです。 だって、真琴のお兄さんは何も悪くないじゃないですか。 それは分かってるって美紗ちゃんも言っていて。 だったら何で?! って思ってたんですけど・・・美紗ちゃんの気持ち、オレもさっき分かりました。 『過去は過去、現在は現在』なんて簡単に割り切れない。 オレは真琴に何もされていない。 真琴だって、蒸し返されたから怒っただけで、心を入れ替えたかもしれない。 だけど、真琴の過去の事実を知った途端に真琴が信用出来なくなった。 あぁ、そういう事をしていた人間なんだって、軽蔑してしまいました。 なんか、裏切られた気がしました。 拘ってもどうする事も出来ない過去に、どうしても拘ってもしまう。 美紗ちゃんに『真琴と義姉妹になる』と言う決断は、なかなか厳しいかもしれない。 ・・・と思いました。 真琴のお兄さんにこんな事・・・すみません」
今度は和馬が頭を垂れた。
「・・・いえ」
さっきとは逆に、オレが和馬の肩を摩り、頭を上げる様に促す。
『家族は一生続く』美紗の悲痛な表情が脳裏に浮かんだ