漂う嫌悪、彷徨う感情。
「・・・すみません。 ちょっと頭の中が混乱していて・・・」
頭と気持ちの整理が出来ない。
どうしたら良いのか分からない。 美紗と真琴の過去を、オレにどうしろというんだ。
今日初めて知った過去の事実に、胸糞も気分も悪くなり、鉛を担がされている様な疲労感が身体を覆った。
そんな疲弊したオレに気付いた和馬が、
「疲れましたよね。 中に入って休んでください。 オレ、お暇しますので」
オレを家の中に戻る様に促すと、玄関のドアを開けた。
「何のお構いもせず失礼しました」
頭を下げるオレに、
「いえいえ。 オレの方こそ変なタイミングで登場してしまいまして・・・お邪魔致しました」
和馬もお辞儀を返すと、玄関を出て行った。
『・・・ふぅ』
静かになった玄関で、やるせなさの滲む息を吐き出す。
そして、ポケットから携帯を取り出すと、美紗に電話を掛けた。
美紗としっかり話し合いが出来るほど冷静にはなれていないが、美紗がちゃんと家に帰れたかどうかが心配だった。
美紗は電話に出なかった。
この日の夜にもう一回掛けてみたが、やっぱり美紗は電話に出てくれなかった。