漂う嫌悪、彷徨う感情。
「ねぇ、美紗。 朝会終わったらちょっとだけ会議室に来て」
美紗がオレを避けようとしているからと言って、おとなしく避けられたままでいられるわけもない。
「・・・それは、仕事の話ですか??」
職場で仕事以外の話を断ろうとする美紗の態度は間違っていないとは思う。 だけど、電話さえ出てくれないくせに、会社内での私語厳禁はちょっと酷い。
「・・・まぁ」
実際、事と次第によっては会社の人間も関わる話だったりする。
「・・・分かりました」
返事をした美紗は、オレの顔を見る事なく頷きながら視線を下げた。
オレとの間に壁を作ろうとする美紗の態度に、イライラに似たモヤモヤが募る。
美紗は何も悪くない。 でも、オレだって悪くない。
だけど、かつて自分に極悪非道な仕打ちをした真琴の兄のオレは、美紗の目にはどう映っているのだろう。