漂う嫌悪、彷徨う感情。

階段を上り、2階にある自分の部屋に美紗を運ぶ。

オカンはオレが家を出て一人暮らしを始めた後もこまめに掃除をしてくれているらしく、ドアを開いた先のオレの部屋は綺麗に整頓されていた。

しっかりと洗濯もしてあるだろうシーツが掛かったベッドの上に美紗を横たわらせると、美紗はきょろきょろと大きな黒目を動かして部屋を見渡した。

「そんなに見んなって。 恥ずかしいだろうが」

手のひらで美紗の目を覆い隠そうとすると、美紗はオレの手をスルっと避け、四つん這いになりながらベッドを降りると、そのまま本棚の方に向かって行った。

「・・・美紗??」

美紗の行動に首を傾げる。

そんなオレの疑問になど構う事なく、美紗は本と本の間に挟まっていた、恐らく昔に薬局でコンドームを買った時のものと思われる紙袋を抜き取ると、それをためらいなく自分の口に当てながら息を吸ったり吐いたりした。

「オイオイオイ・・・」

半笑いになりながら、美紗の口元にある紙袋を取り上げようとすると、美紗はオレに背を向けてそれを阻止した。

只ならぬ美紗の様子に戸惑う。
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