漂う嫌悪、彷徨う感情。
ふと、美紗の動作が前に情報番組で取り上げられていたものに似ている事に気付いた。
「・・・過呼吸・・・なのか??」
オレの問いかけに答える余裕のない美紗は、目を固く閉じ、息苦しさを堪えながら何度も袋の中で呼吸を繰り返した。
過呼吸だとしたら、ペーパーバック法は確か危険って言われているはず。 再度美紗から紙袋を奪おうと手を伸ばすと、美紗は『やめて』と言わんばかりに顔を左右にフルフルと振った。
「・・・・・・美紗、初めてじゃないだろ」
美紗はきっと、正しいペーパーバックの仕方を知っているのだろう。
とても辛そうだけど、どこか慣れている様にも見える美紗。
だけど、美紗がオレの前でこんな状態になった事など、今まで1度もなかった。
美紗は呼吸も乱れているが、相変わらず震えも止まらない。
寒いのか?? 熱でもあるのか?? と美紗の頬に触れようとすると、美紗が身体をビクっと跳ねさせ、オレから後ずさった。
「・・・・・・美紗??」
「・・・・・・勇太くんは・・・妹さんの事・・・好き??」
美紗が震えながら、苦しそうにしながら出した言葉は、今しなければいけない質問とは思えない。
「別に。 普通に好きなんじゃね?? 妹だし、特別嫌いじゃないし、仲は別に悪くないとは思うけど?? まぁ、さっき見た通り悪口言い合ったりはするけどね」
とりあえず聞かれた事に答えると、
「・・・・・・そっか。 ・・・・・・勇太くんごめんなさい。 ワタシ、結婚出来ない」
ただでさえ息をし辛そうな美紗が、頭を下げながら泣き出した。
「は?? ちょっと待ってよ。 何急に。 美紗、何で??」
「・・・・・・ワタシ、中学の時・・・ずっと真琴ちゃんにいじめられてたの」
まだ教えていないはずの妹の名前が、美紗の口から出てきた。