漂う嫌悪、彷徨う感情。

「自分が浮気したせいで結婚が取りやめになったって。 ・・・だから、アナタが親しそうに美紗と喋ってる姿を会社の人たちに見られたら面倒なんですよ!!」

美紗の吐いた嘘を簡潔に説明すると、

「佐藤さんは、どうしたいんですか?? 結婚、どうするつもりなんですか??」

オレの説明では足りなかったのか、和馬は質問を被せた。

「しますよ!! するに決まってるじゃないですか!!」

焦りが声の音量を上げ、怒鳴る様に即答する。

早く和馬にこの場から去って欲しい。

「それ、美紗ちゃんの気持ちは考慮されてますか?? 結婚後の事とか、ちゃんと考えていますか??
佐藤さんの両親が年老いた時、介護が必要になるかもしれない。 可能性として、痴呆になる事だってないとはいえない。 認知症の人は、自分の意と反して暴言を吐いてしまう事がある。 死を意識するほどに自分をいじめた人間の親の、本心ではないにしろ、心無い言葉に美紗ちゃんを晒す事は出来ますか?? 美紗ちゃんに親の面倒を看させる事に、あなたの心は痛みませんか?? 美紗ちゃんは、幸せになれますか??」

オレの気持ちとは裏腹に、和馬から矢継ぎ早の質問が返ってきた。
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