漂う嫌悪、彷徨う感情。
「・・・それが本当ならゴメン。 本当にゴメン。 真琴にもちゃんと謝らせる。 でも、それは昔の話だろ。 大事なのは今じゃん。 だから、そんな事言うなって」
美紗を宥めようとまた近付くと、
「・・・そうだよ。 昔の話だよ。 ワタシにとっては思い出したくない、忘れてしまいたい過去の話だよ」
美紗は顔を振り上げ、両目から涙をボロボロ零しながらオレを見た。
「・・・真琴呼んでくる。 美紗が赦そうと思えるまで、何度でも頭下げさせる」
思い出しただけで過呼吸になってしまうほどに美紗を追い込んだ真琴が赦せない。
引きずってでもここに連れて来て美紗に謝罪させようと、リビングに向かおうとした時、
「・・・何度も、何度もね、死のうと思った。 なのに出来なくて・・・。 中学を卒業した時、本当に嬉しくて、物凄く安堵して、もう2度と会いたくない。 会わない。 って心の底から思った。 ワタシをイジメていた人間から逃げよう。 誰も自分を知らない高校に行こうって決めて、片道2時間半かかる学校に通ってた」
美紗が思い出したくないはずの過去の話をし出した。
暗に『真琴を連れて来るな』と伝えたかったのだろう。