漂う嫌悪、彷徨う感情。
「何か変な感じだよね、美紗ちゃんと佐藤さん。 お互いがお互いを想って行動してるのに、お互いがお互いの意図とは正反対の事してるんだもん」
ワタシを見て呆れた様に笑う日下さん。
「佐藤さん、優しいから・・・」
勇太くんの優しさを少し厄介に感じながらも、あっさり破談を受け入れられたらそれはそれで悲しかったはずで。 ワタシは勇太くんの事よりも、自分の気持ちに矛盾だらけのワタシ自身に1番手を焼いていて悩んでいるのかもしれない。
結婚したいのに、したくない。 勇太くんの優しさを、拒否しながらも嬉しく思っていたり。
こんなワタシの思考を見透かしているから、日下さんは呆れているのかもしれない。
「美紗ちゃんの嘘だって、佐藤さんへの優しさからでしょ??」
そんな日下さんの言葉に、目頭が熱くなった。
こんな時に、自分を汲み取ってくれる存在が有難かった。
「・・・自分の事を分かってくれる人がいるって、いいですね。 救われます」
「じゃあ、オレの事も救ってくれない??」
日下さんの一言に、目頭は一気に冷え込み、眼球はカラカラに乾いた。
この人は何を言いだしているのだろう。 今のワタシに何をしろと言うのだろう。