長い幸せ
僕は華に何もしてあげられなかった。それでも時折彼女は、僕を見ていると癒される、と優しい笑顔を向けてくれた。


たぶん、華も孤独だったのだろう。


僕も華の笑顔に癒されていた。











だけど僕と華の穏やかな日々は、ある日突然崩れた。


華が浮気をしたのだ。


僕と華はそんな関係では無かった。だから正確には浮気とは言えないかもしれない。でも彼女の愛情は感じていたし、僕もいつの間にか好意を持っていた。


それなのに華は、僕がいるにも関わらず狭い六畳に新しい奴を連れてきたのだ。


新しい奴は僕とは違い、自己主張が激しかった。いわゆる、俺様というやつだ。少し触れようとしただけで、彼女に怪我をさせるほど傲慢で乱暴な奴だった。


こんな奴の何処に華が惹かれたのか分からなかった。でも人は自分には無いものを求めるというから、そんな所なのかもしれない。


僕は他に行くところが無いので、奇跡的に追い出されはしなかったが、部屋の片隅でじっと見守る事しか出来なかった。




< 3 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop