長い幸せ
華が僕に再び関心を向けてくれたのは、それから大分経ってから。僕は粘り強く彼女を待っていたが、そろそろ限界を迎えそうだった時だ。


体はボロボロで、水さえよく飲めなくなってきていた。精神的にも追い詰められており、自分がこのまま消えてしまってもいいかもしれない、とすら思い始めていた。


華はまた気まぐれに、僕に話し掛けてきたのだ。


「今日は晴れるかな?」


そんな他愛もない言葉だったけど、僕は嬉しかった。


彼女はやつれてしまった僕に気がつくと、少し申し訳なさそうに微笑んだ。そして僕に水をくれた。


こんなに美味しい水は、初めてだった。


この時僕は華に恋をしてしまった。いや、恋をしたのはもっと前かもしれない。初めて店で逢った時に、僕は既に落ちてしまっていたと思う。だから彼女を信じて待っていたんだ。


待ち続けてこの身が朽ち果ててしまっても、僕はきっと後悔はしなかっただろう。


それから僕と華は同じ部屋で幾つかの季節を過ごした。


幸せだった。僕は華と暮らせるだけで、それ以上は望まなかった。彼女も、僕との穏やかな生活にしみじみと幸福を感じているようだった。




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