長い幸せ
新しい部屋は、前に居たボロアパートよりも広かった。そしてそこには、引っ越し荷物を運んでいたあの男がいた。


どうやら華は新しい部屋でこの男とも一緒に暮らすらしい。僕はそれでも良かった。


華と一緒にいられるのなら……


「あれ?華、こいつやっぱり持ってきたんだ」

「うん。ちょっと大きくなり過ぎたし、場所もとるから友達に貰ってもらおうと思ったんだけどね」

「やめたんだ?」

「うん……何か、愛着湧いちゃって」

「いいかもな、部屋にあれば癒されるし」

「そう、結構ヒーリング効果あるみたい」

「これ、何ていうんだっけ」


そういえば、僕はまだ華に名前を教えていなかった。








「私も知らなかったから調べたんだけど、ポトスって言うんだよ。観葉植物では結構育てやすいし、生命力も強いんだって。」








ああ……華はいつの間にか僕の名を知っていてくれたんだね。




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