死神のお仕事
「ご安心を。…手術は成功いたしました。早ければ二週間で退院できますよ。」
微笑をたたえながら答えた。
「さて…恨みや因縁は何も無いが、これが私の仕事なのでね…。」
同じ頃、アルフはシャンテの隣の病室に佇んでいた。
個室のベッドに一人の患者が横たわっている。
八十代前半ほどの白髪の老翁。ヒューヒューと苦しげな喘鳴が聞こえる。
「あと…十…」
チッ…チッ…チッ…と時計の秒針が時を刻んでいく。
「………時間ジャストだ。」
アルフは大鎌を大きく振り上げた。
…大鎌は半円を描き、風を斬り…命を断つ。
…呼吸音が消えた。
老翁は眠るように安らかな表情で、その生命を全うしたのだ。
「冥福を祈る…では。」
バサッ…!彼が飛び去った後、病室の床には黒い羽根が落ちていた…。
(シャンテの手術は成功のようだな…。)
窓越しにシャンテの病室を覗き、アルフはそう思った。
満月に照らされた彼の顔には、めったに見せない微笑みの表情があった。
「…次の仕事に行くか。」
一人呟いて、彼が翼を大きく羽ばたかせた時だった。