死神のお仕事



「あんた…誰だ?」

男は首にひも付きの黒い帳簿をかけていた。


右手には、さすまた。

頭に兜のようなものを被り、そこから牛のような鋭い角が生えていた。

歯は吸血鬼のように尖り、頑丈そうな赤い鎧を着ていた。

顎から胸にかけて、黒くふさふさの髭がたくわえられ、左手でその髭を撫でていた。



「ふむ…わしに『あんた』と言えた者は数少ない。なかなか度胸があるようじゃのぅ…ほっほ。」


「………?」


アルフは身構えたまま、怪訝そうに眉をひそめた。



「あー、こほん!アルフレッド・フィアラ。おまえは、ここがどこじゃかわかるかの?」


「…敢えて言うなら、地獄とかいうやつかな。」


「そうじゃな。敢えて言わなくても、地獄。正確には広い天界の中の一角に過ぎんのじゃがな。」


「…そのことから推測してみれば、さしずめあんたは閻魔ということになるな。」


腕を組み、男をにらむアルフ。


男は特に気を悪くした態は無い。

むしろ、喜んでいるようですらあった。
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