水色の夢を、キミと。
世界で一番
桜のおかげですっかり周りの空気もピンク色に染まる4月。
新学期のせいか、辺りの空気もすっかりふわふわと浮ついている。
おかげさまでわたし、倉谷 夏音( クラタニ カノン )は無事高校2年生へ進級することができた。
周りには、友達と楽しそうに話しながら学校を出ていく姿がある。
今日は新学期1日目であり、始業式だけで授業といった授業もないので早く帰ることができるのだ。
「夏音、お待たせ。待った?」
「ううん、全然」
「そっか。じゃあ帰ろう」
校門の前で満開の桜を見上げていると、ふいに横から声がかかった。
桧山 昴( ヒヤマ スバル )だ。
キリッとした目に、野球ですっかり日焼けをした肌。
野球部らしく坊主――という訳ではないけれど、爽やかな短髪。
そして、次期4番バッターと噂されるバッティングの腕。
今まできっと、ものすごい数の女子から告白されてきたはずだ。
――――とりあえずそんなとんでもない人が、今のわたしの彼氏なわけなんだけど。
「そういえば、同じクラスになれなかったね」
「仕方ないだろ、一応先生が知ってるカップルは全て離されるってジンクスあるんだから」
「そっか。そんなのがあったか」
いつも話して帰るのは他愛もないことばっかりだ。
今日の朝寝坊しそうになった話とか、お弁当の話とか。
恋人らしいことは何一つなく、これなら全然友達と変わらないなぁ、なんて思ってしまったり。