青涙
「那子も気づいてないだけ…。
あなたは平太が大好きなのよ」

「お姉…うっ…ちゃん。それは…うっ…違う…」

「分からないの?
あなたはいつも私の本当に一番好きな物が好きじゃない」

「お姉ちゃん…うっ…が本当に…うっに一番…うっ…好きな物?」

そういえば前に変人がお姉ちゃんの一番好きな物は違うって言ってた…。

「那子…あなたは小さい時によく私の物で遊んでたわよね」

小さい時…。

『那子、ダメじゃないの。
そのクマの人形はお姉ちゃんのものよ。返しなさい』

『い~や~。ううっ…』

『困ったわね』

『お母さん。いいよ。
それ、那子にあげる』

『いいの? お姉ちゃん』

『うん』

『那子。お姉ちゃんがクマの人形を那子にあげるって…』

『やっ…うっ…た~』

『良かったね。那子』

「私の一番好きだったクマの人形、ハート形のヘアピン、青のオーバーオール、全部那子。あなたは好きになった」

「確…うっ…かに…好き…うっ…だった」

「そうでしょ?
だから、平太も好きなのよ」

「違う…うっ…よ」

「今までみたいに認めてよ!!
あなたのために譲ってるのに」

「譲…うっ…る?」

『あなたはいつも本当に一番好きな物が好きじゃない』

今まで…。

『はい、どうぞ。
冷麺と餃子よ』

『おいしそう』

『早く食べよう』

『那子』

『ん?』

『餃子好きでしょ? 私のあげる』

『未子、餃子好きなの?』

『う…うん…』

『じゃあ、お母さんのもあげるわね』
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