青涙
平太が私を抱き締める。

「思いっきり…泣け…」

「ううううう…」

平太が温かくて…温かくて…。


辛くなる…。

「もう…大丈夫か?」

「うん…。
大分…ううっ…おさ…うっ…まった…」

「じゃあ、もういいな…」

平太が離れる。

「本当に思いっきり泣いたな。
俺のジャンパー、お前の涙と鼻水で濡れてるぜ」

「ごめ…うっ…ん。
拭くよ…」

そう言って私が鞄から取り出したハンカチを

「サンキュー。
俺が自分で拭くわ…」

平太は奪うと、拭く。

「これで…良いかな…。
ハンカチは洗って返すよ」

平太が自分のズボンのポケットの中にハンカチをしまおうとする。

「いい…うっ…よ…。別…うっ…に」

「良くないだろ。
借りたんだから」

「いいって…うっ…ば…。
私のせ…うっ…いなんだし…」

「俺が思いっきり泣けって言って。
勝手にお前を抱きしめたんだ。

だから、俺のせいだ」

「そうだ…うっ…けど…」

「そうなんだ。
だから、洗って返す。
いつか、な」

平太がハンカチをポケットにしまう。

いつか?

「いつ…うっ…かって…ううっ…いつ?」

「分からん」

「返す気…ない…うっ…でしょ?」

「ない」

「返す気…ううっ…ないのに、“返す”なんて…うっ…言ったわけ?」

「返さないといけないって分かってるよ。
でも…」

「で…ううっ…も?
何?」

「返したくないとも思うんだよ。

お前のものだから」
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