青涙
「ごめ…んなさい」

強くはたいてしまった変人の右手をつかんで見る。

赤くなってる…。

「痛…ううう…い?」

「…痛くない?


大丈夫?」

「…私…うう…は…大…うっ…丈夫だ…ううっ…けど」

「俺は大丈夫じゃない。痛いぞ」

「…ど…ううっ…こが?」

「歯が」

「歯…うっ…医者…ううっ…に行…うううう…け!」

「冷たっ!!!
俺にも“…痛…ううう…い?”って聞けよ!!!」

「…ううっ…い…うっ…や!!」

「差別すんなよ!!
ほら、俺にも目を見ながら言って?」

平太に手をとられると、目を合わせられる。

「言わ…ううっ…ない!!!」

平太には感じない。

平太に手を握られても

平太に目を合わせられても何も感じない。

あいつには感じるのに…。

感じたくなくても…感じるのに…。



「魔王。帰ろうぜ!!」

「…無理だ…」

「何かあるのか?」

「…無理だ…」

「無理って…」

「平太、帰るよ」

私は平太の腕をつかみ、引っ張っていく。

「魔王も」

「…無理だ…」

「明日ね」

「…離れて歩かないで…」

「魔王。残念だけど、また今度一緒に帰ろうな!
絶対だぞ!! 約束だぞ!!!」
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