青涙
「平太…。今日が私の誕生日って事。変人に言わないでね」

「何で?」

「言わないで欲しいから」

「何で?」

「言わないで欲しいから」

「だから、何…?」

「もし、言ったら…」

「言ったら?」

「その時に言う」

「言ったらどうなるんだよ!」

「だから、その時に言うってば!!」

「教えろよ!!!」

「言わなければいいでしょ!!!!」

「そうだな!!!!!」

絶対に言わないで…。

もし、変人にバレたら、変人がお姉ちゃんに言うかも知れない。

そしたら、お姉ちゃんの事だ。

きっと…じゃない。確実に自分の事を責めてしまう。

そんな事させたくないよ。

私の誕生日だもん。

幸せな気持ちで居て欲しい。

私の事なんて気にせずに…。



「那子、なんかおごってやるよ。
誕生…」

「平太!」

変人は帰りの支度をすると、私達に挨拶もせず、急いで教室から出ていった。

何よ…。

“さよなら”ぐらい言って行きなさいよ…。


…言った事…ないか…。

「おい!」

「何?」

「誕生日だからおごってやるけど、何食べたい?」

「食べたくない」

「お腹空いてるだろ?」

「空いてない」

「俺の財布を心配してるのか?」

「してない」

「してないなら、どうして…」

「誕生日プレゼントなら貰ったから、おごらなくていいよ」

「でもさ…」

「一人で帰ってね」

「一人で? お前は?」

「一人が嫌なら、あの北田さんと一緒に帰れば」

私は一人で教室を出ていく北田さんを指さす。

「分かった。俺、北田さんと帰るな。
じゃあな!!!」

「これで…よしと…」

さて…どこに行こう?
< 49 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop