青涙
「せめて…電話…」

いや、今は原井先生と一緒で電話には出られないはず…。

「メールさせて。
じゃないと…平太…待っちゃうっていうか…。
心配して…探すかも…」

「……」

「心配かけたくないの。
だから…」

ブーッ、ブーッ、ブーッ。

私の鞄の中から聴こえてくるスマホのバイブ音。

平太からだ!!

そう思い、鞄の中を開けようとした瞬間…。

バッ。

「ちょっ…」

変人に鞄を取られる。

「いい加減にしてよ!」

変人の手を振り払う。

「私…学校に戻るから…」

そう言うと…私は変人に背中を向けて歩き出す。

少しの間だけど…

変人と手を繋げた…。

嬉しい…。

でも…

少しの間だけ…。

もう少しだけ…。

もう少しだけ…。

あなたと…

グッ。

手を…握っていたかった…。

変人に右手を握られると、振り向かされる。

「ううっ…」

「……」

変人がトイレットペーパーの紙を手にして。

拭…。

「いい…ううっ…てば!」

「……」

変人がトイレットペーパーの紙をポケットにしまう。

「離し…ううっ…て!!」

必死に振り払おうとするが力が強くて振り払えない。

「離し…」

「言った…」

「言っ…うっ…た?」

「帰って…いいと…」

「平太から…ううっ…かかってきた…うっ…私の…うっ…電話に…ううっ…出て、平太に“帰っていい”って…ううっ…言ったっ…うっ…て事?」
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