青涙
変人がコクりと頷き…

「帰ろう…」

私の右手を握り直す。

「うん…」

私のその言葉を聞き、変人が歩き出す…。

「でも…」

私は握られてる右手を引いて、変人を戻す。

「手は…うっ…離して…」

「……」

そう言っても変人は離そうとしない。

「一緒に…帰る…ううっ…から…」

「……」

離さない…。

離してよ…。

あんたが離さないと私が…

少しずつ…

離したくないけど私が…

少しずつ…

離さないといけなくなる…。

離そうとする私の手を

変人が強く握る。

「呼んで…」

「えっ?」

「呼んで…。


那子…。



呼んで…」


『那子…』

初めて…

私の名前を呼んでくれた…。

呼んで…くれた…。

「うううう…」

嬉しい…。

嬉しいよ…。

あなたが好き…。

あなたが…好き…。

私も…

「呼んで…。


呼んで…」

呼びたい…。

呼びたい…。

けど…

「東間…うっ…くん…。


東間…うっ…くん」

私はこんな風にしか

あなたを呼べない…。

呼べないの…。

「……」

変人が…

握っていた私の右手を…


離した…。
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