青涙
「…な…。
那子ってば!」
「何…。
お母さん…」
「あなたって子は…
私の話、聞いてなかったの?」
「話し…てた?」
「全く聞いてなかったの?」
「うん…」
考え事…してたからね…。
「最初から話すわね…。
朝、学校に行く時に玄関の前に居たわよね?」
「居た?」
誰が居たかって事?
「真洋くんが」
誰かは…
「うん…」
分かってるわけね…。
という事は…
何で…
「真洋くんは何で…」
居たか…。
「居たの?」
「ええっと…」
考えろ…。
「確か…」
考えろ…私!
「急に、お姉ちゃんと、一緒に、学校に行きたい、と思って、来た、って」
「急に…」
「うん…急に…」
「そう…」
どこか…
おかしかった…かな?
嘘って…
バレて…
「真洋くんは本当に未子が大好きなのね。
急に会いたくなって来るなんて…」
バレて…
ないみたい…。
「さっきもまた急に会いたくなったのね」
「さっ…き?」
「うん。
那子がトイレに居る間、未子、外出したの。
“真洋に呼ばれたから、出てくるね”って…」
「そう…なんだ…」
「あんなに想われて…
未子は幸せ者ね…」
「そう…だね…」
幸せ者…
だね…。
「那子…どうしたの?」
「嬉しくて…うっ…泣いてるの…。
お姉ちゃんを…ううっ…ちゃんと…うっ…。
好きで…居てくれ…うっ…てる事が…」
悲しくて…泣いてるの…。
お姉ちゃんの彼氏だと…
思い…知らされて…。
「うん…。
私も、未子が幸せそうで嬉しいわ」