恋の歌が響くとき
 
「ホント、那奈はその女癖の悪ささえなければ理想の王子様なのにね」
「でも欠点のない王子なんて興醒めでしょ?」
「その開きなおっていくスタイル嫌いじゃないけどさ」


那奈の膝から頭をあげて、氷の溶けかけた薄いコーヒーを飲み干す。


――私たちが次にステージに立つのは8月の終わりにある地元の夏祭りで、今はそれに向けた練習をしている。


だから、本来なら夏休み初日からこんなに飛ばした練習する必要なんてない。大まかな流れは決まっているし、曲だってそんなに難しいものではないからね。


けど手を抜くということを知らないリーダーの空くんは週に3回、みっちり練習スケジュールを組んでいる。もちろん不満がないわけではないが、これも青春の一ページだろうし、なによりみんなといると楽しいから。


だから週3回、朝から晩までぎゅうぎゅうに詰め込まれた練習に誰も文句を言わないのだろう。

 
< 10 / 42 >

この作品をシェア

pagetop