恋の歌が響くとき
 
こみ上げてくる涙らしきものを無理に抑え込んで立ち上がろうとしたとき、教室の入り口から「はよー」っと聞きなれた引くい声が聞こえてきた。



私が聞き間違えるはずない。
このだるそうな声は。


「空!」


朝に弱い空は凛の声が聞こえてなかったらしく、席についてすぐカバンを枕に眠る体制を取った。そんな空のもとへ駆け出し、のぞき込むように座った凛は相変わらず嬉しそうに薬指の指輪を撫でている。


「空、見て!零ちゃんが指輪くれたの」
「おーよかったな。ていうか凛、今朝なんで俺を置いて行ったんだよ」
「だって空ってば全然起きないんだもん」
「何年幼馴染やってんだ。それくらい気合で起こせ」
「えー無理ー」


そんな二人のやり取りを見ていたクラスの女子が羨まし気に声のトーンを下げた。
 
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