恋の歌が響くとき
終わりの始まり
 
半ば逃げるようにたどり着いた馴染みの音楽室は、もれなく残暑の恩恵を一身に受けていた。


半端じゃない熱気の漂う音楽室にクーラーを入れ、暑過ぎるだろとボヤきながら冷房の前を陣取る。


そんなに広くはないから、すぐに涼しくなるのだが防音の壁のせいか熱が異常に篭っているのだ。手に持っていた荷物と相棒のギターを無造作に投げ出して、涼しい風を全身に浴びるように着ていたシャツをはしたなく持ち上げた。


まったく暑すぎて、目に浮かんでいた涙も引っ込んじゃったよ。


先ほどの教室でのことをなるべく思い出さないよう、夕べ見たテレビドラマのことを思い返す。あれも確か、好きな人に恋人がいるって話だったよなあ。


なんて、そんなどうでもいいことをだらしなく考えていたとき、不意に使い古されたようなアコースティックギターが視界に飛び込んで来た。


学校の名前が入っているところをみると、誰かが授業で使用したものを片付け忘れたのだろう。というか、うわー懐かしいなあ。中学の頃、好きな歌を弾きたいがために毎日練習してたっけ。

 
< 25 / 42 >

この作品をシェア

pagetop