恋の歌が響くとき
 
汗の張り付くシャツを元に戻して教卓の側に置かれたそれを手に取ってみる。ジャン、と軽く弦に手を這わせて幾らか音を調整し、ニヤリと口角をあげた。


――ん、いい感じだ。


幸い、ここには私しかいないわけだし久々にソロコンサートでも開いちゃいますか。


アコギのショルダーに腕を通し、重いと見せかけて軽いそれを抱きかかえる。


ここだけの話、前はよくこうやって一人で弾いて歌ってたんだよなあ。


今は凛っていう最高のボーカルがいるし、下手な歌を歌う機会はめっきり減ったわけだけど、たまにはこうやって昔をなぞるのも悪くはないだろう。


 
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