恋の歌が響くとき
『俺、零が一緒にバンドやってくれるまで毎日口説きに来るから』
『また、そんなこと言ってさ。私がいなくても三人で十分でしょ?そんなにこだわる必要なんてないと思うんだけど』
『何言ってんだ。俺らのバンドには――というか、その、俺には零が必要なんだよ』
『……え、っと?』
『ば、違っ、ほら、その零は楽譜とか読めるし楽器の知識もあるだろ!つまり、そういう意味で必要だって言ってんだ』
『あはは、ですよねー』
あの時――私はうっかり自分の中にある空への恋心に気づいちゃったんだったなあ。ホント馬鹿だった。こんなに苦しくなるくらいなら、いっそ何もかも投げ出して、
「零」
そこでやっと誰かに見られているのだと気が付いた。
驚いたように目を見開いて、零ともう一度名前を呼んだその人に思わず声が漏れ出てしまう。