恋の歌が響くとき
 
答えろ、って言われても私の好きな人はキミですなんて言える訳もなく。


いつになく真剣な空の雰囲気を誤魔化すように笑ってみせた。


「私は……空が答えたら答えようかな」
「な、なんだよそれ」
「空はいるの?好きな子」


答えの分かりきった質問なのに、と自分でも思う。それでも空はきっといつもみたいに不機嫌な顔で、そんな奴はいないって答えて、


「いるよ」


壁にかかったアナログ時計の針が、カチリと指針を鳴らした。


「俺が好きな奴は、危なっかしくて目が離せない……そんな奴だ」

 
< 31 / 42 >

この作品をシェア

pagetop