恋の歌が響くとき
そう言って愛おしいそうに目を細めた空に、何も言い返せなくなってしまった。


っ……や、っぱり。空と凛は両思いなんだ。


真っ白になりそうな思考に相槌をはとつ打って、ぐっと俯く。ああーーもう最っ悪。胸が、痛い。


「ほ、ほら俺は言ったぞ。零はどうなんだよ」
「私は……」


わたしは、そらが好きだよ。


なんて、言えるわけもなく。私は誰も好きじゃないと笑顔を貼り付けるため顔をあげた。すると、本日二度目の驚き顔がそこにあった。え?なにをそんなに驚いてるんだ。


「零、今なんて、」
「え?うそ、まさか私」


今の口に出てた?!あからさまに慌ててみせた後では「冗談だよ」と話をすり替えることなんて出来なくて、思わずその場から立ち上がり空から数歩離れる。


まずい、私、どうして。抑えた口に言葉たちが戻ることはなく、あとは起こってしまったことを嘆くしかなかった。

 
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