恋の歌が響くとき
恋の歌が響くとき
 

あれから、私は空と「あの日の話題」について話すことはなかった。


空は何度か話すタイミングを作ってくれたのだが、私はそれに一切答えることが出来ず。


空からすれば言い逃げされたようでいい気はしないのかもしれないが、ここで話をしてしまったらバンドの今後に関わりかねない。


振られた相手と息を合わせてセッション出来るほど私は大人じゃないから。だから空には「次のステージが終わるまで、あの日の話はやめよう」とお願いしたのだ。


空も思うことがあったようで、渋々その提案を飲んでくれた。


そして、今日。


いよいよステージにあがる日が来てしまった。


騒がしい舞台のバックステージで、着ている衣裳の袖を調整する。


空と凛は関係者との最後の詰めに行ってしまったため、ここには私と那奈しかいない。緊張のかけらもないらしい那奈は、眠そうに携帯を見つめていた。


「うわー……週末雨だって。女の子とデートする予定なのについてないや」
「那奈?この後ドキドキのステージが待ってるってわかってるよね」
「もちろん。それに、そのドキドキのステージが終わったらやっと空と話ができるし、零ちゃんはいろんな意味でドッキドキなんじゃない?」

 
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