恋の歌が響くとき
 
「どうしたの空」
「いや、珍しく緊張した顔してたから解してやろうと思ってな」


髪をワックスで後ろに流した空はいつもの二倍くらいかっこいい。


「珍しく、ってそりゃあ緊張するに決まってんでしょ。空こそ手震えてない?」
「はあ?武者震いに決まってんだろ」


なにそれと笑って、楽し気に揺れるお祭りの街道を見つめる。


これが終わったらみんなで屋台を回るつもりだが、やっぱり一番最初に買うのはたこ焼きかなあ。なんて至極くだらないことを考えていたとき、急にぐっと手を握りしめられた。


「空?」
「これが終わったら、俺らのことにも決着つけような」
「……バカ、なんでそれを今言うかな」


こんなんじゃ余計緊張しちゃうよ。

 
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