恋の歌が響くとき
先ほどまでの不機嫌はどこへやら。嬉しそうにトーンを上げ空の腕に抱き付いた凛を目の端で見届け、隅に置かれている革張りのソファーに倒れ込むように寝そべった。ううっ、冷たくて気持ちがいい。
「零(れい)?どうした気分でも悪いのか?」
ソファーへ直行した私を心配したらしい空が険しい顔でこちらに歩み寄って来た。
そんなイケメンへ未使用のタオルを投げて、顔に浮かぶ汗を拭くように促す。水も滴るいい男だってのは重々承知しているが、このままではクーラーで乾いて体が冷たくなってしまうからな。
「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけ」
「疲れたらスポドリ飲めって。水分補給にコーヒー飲むなんて聞いたことねぇよ」
床に直接置かれた私のアイスコーヒーに口をつけ、顔を歪めた空に笑って見せる。
「だって下の自販機、ほとんど売り切れだったんだもん」
「じゃあ俺がなんか買ってきてやるから。それまでそこで体力温存してろよ」