恋の歌が響くとき
 
え?ちょ、凛ってば何言ってんの?予想だにしないことを凛が言い出したので、慌てて止めに入ろうとすると何故かスタッフの人にアコースティックギターを手渡された。


なにこれ、聞いてないんだけど。


「ちなみに、空くん。この後好きな女の子に告白するようで、この歌はその子が歌っていて印象に残っていたからと、このステージで歌ことになりました。そりゃあ、好きな子が歌ってたらどんな曲でも印象に残るよね」


那奈が会場に笑いを誘い、その場を盛り上げているが私はそれどころではなかった。


空がこの後、凛に告白する――ってのはこの際置いておいて、一体何の曲を歌うんだ。


ていうか空って歌とか歌えるの?聞いたことないんだけど!っていうかナニコレ!まさか私にサプライズでするつもりだったの?現状がまったく飲みこめず、手に握ったアコギを握りしめる。


「大丈夫だよ零。あの日と同じのを弾けばいいから」


いつのまにかセンターマイクに立った空が、私の方を振り返ってそう云った。


あの日と同じって……いつの?
 
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