恋の歌が響くとき
だらしなく寝そべった私に目線を合わせ、くしゃりと頭を撫でた空に思わず体温が上がってしまう。
カバンの上に置いてあった制服のジャケットをこちらに放り、膝にかけろと顔を反らした空は凛に手を引かれ教室を出ていく。その背を見つめ、出そうになったため息を大きく飲みこんだ。
――やっぱりお似合いなんだよなあ。あの二人。
「気になるなら零ちゃんも一緒に行けばよかったのに」
私に膝枕をする形でソファーに座ってきた那奈はそう言って、女の子なら誰でもトキメクような優しい笑みをこちらに落とした。
「……ただの買い出しなんだから二人で十分でしょ」
「僕らの零ちゃんは相変わらず素直じゃないね」
空から貰ったそのジャケットを握りしめ、爽やかな夏を思わせる香水の香りを胸いっぱいに吸い込む。