恋の歌が響くとき
 
そう、何を隠そう私はこのバンドのベース兼リーダ川瀬空のことが好きだ。


一目惚れ、だったかどうかは定かではないが正直割とぞっこんの恋心を抱いている。


――私たち4人が出会ったのは入学してしばらくたった蒸し暑い5月初めのことだった。


同じクラスですぐに意気投合した凛が突然「会わせたいひとがいる」と半ば無理矢理引き合わせられたのが当時、学年NO.1のイケメンと言われていた空と、その甘いマスクのから王子なんてあだ名のついた那奈だった。


そこに同年代一可愛い凛まで加わって、それは豪華なメンバーが昼下がりの空き教室に揃ったというわけだ。それから私たちを見渡した空が一言こう言った。「なあ、俺とバンド組もうぜ!」と。


「零ちゃん?ぼーっとしてるけど本当に大丈夫?」
「ん?ああ、ごめん。初めてみんなに会った日のこと思い出してた」
「うわー懐かしいね。と言っても、あれからまだ一年しかたってないけどさ」


うちわでこちらに風を送ってくれていた王子を見上げ、苦笑いをしてみせる。


「空ってばいきなりバンドやろう!だもんね」
「そうそう。僕なんてみんなと違うクラスで、まずは自己紹介からはじめましょーレベルだったのに」
「しかも私たちを誘った理由が、顔がいいから。だよ?あの時はさすがに空の人格疑ったわ」

 
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