恋の歌が響くとき
 
高校に入ったんだから最強のメンバーでバンド組んで楽しみたいんだよ!と頭空っぽなことを言った空に、私と那奈は呆れて声も出なかったのだが、凛だけは違った。


そりゃそうだよね。凛と空は幼馴染というやつらしく、小さいころから互いに夢を語り合っていたらしい。


凛の夢は歌手になることで、それを支えることが空の夢――なのだとか。正直、勝手にやってろよバカップルがとその時は思ったのだが、なんとそこに那奈が乗っかったのだ。


「ふーん。でも確かにこのメンバーなら顔にはずれはないみたいだし、バンドマンってモテそうだね。俺がドラムでいいなら混ざってもいいよ」って、今考えても簡単に決め過ぎだよね那奈。


「零ちゃん最初は渋ってたけど、結局一週間後にはOK出してたよね」
「だって全員、ほとんど楽器も触ったことなかったんだよ?!現実的に考えて無理だろとか思ったけど空の情熱に負けたっていうか」


毎日私のクラスにやって来て熱心にバンドへ誘う空を、いつの間にか好きになってたからなんてバックボーンは多分一生誰にも言えない。


それに――初めて聞いた凛の歌声はその辺のプロなんて目じゃないほど綺麗だったから。


つい、頑張ってみようかなと絆されてしまったのだった。

 
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