恋の歌が響くとき
 
そんな感じで始まった私たちのバンド活動だったのだが、楽器組は驚くことにみんなめちゃくちゃ器用だった。


練習を始めて半年で簡単な楽曲ならセッション出来るようになり、文化祭の時期にはそこそこ立派な演奏ができていた。


私の場合、アコースティックギターをやっていたからそれなりに弾けたが、空と那奈は全くの未経験者だったからなあ。それを考えると元から楽器の才能があったのかもしれない。


舞台デビューしたのは忘れもしない一年の文化祭だ。


学年きっての美男美女が集まったバンドだ、なんて口コミもあってかありがたいことに会場となったステージは満員御礼状態だった。まだあれからそんなに時間は経っていないというのに、もう遠い昔のことのようだ。


「空、かっこいいし性格も男前だもんね。あれに押されてオッケーしない子なんていなさそう」
「でしょ?私も空に弄ばれた一人ってわけ」
「空には凛ちゃんがいるもんね」


優しい声で酷く残酷に囁いた那奈から目線を下げ、二人のことを思い浮かべる。


 
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