恋の歌が響くとき
 
付き合ってはいない、手のかかる妹にしか思っていないと空は照れながら言っていたが、あの二人の間には入り込隙なんてあるようには思えなくて。


それに、空も凛も今や私の大切な親友だから。この関係が崩れてしまうくらいなら、私が抱える恋心は消してしまった方がいいのだろう。


――そう、分かってはいる。


でもっ……どうしても空を想う気持ちは無くなってくれないんだ。


「ねえ、零ちゃん。僕にしとけばいいじゃん」


そう口にして私の髪を梳くように撫でた那奈を視界の端に捉え、じっとりと目を細めた。


「僕なら零ちゃんにそんな辛そうな顔させないよ?」
「那奈……いつもそうやって女の子口説いてるの?」
「あれー?普段ならここで仕留めちゃうんだけどなあ」


いつの間にか私の足をなぞっていた那奈の手を払い、空のジャケットで短めのスカートを覆った。

 
< 9 / 42 >

この作品をシェア

pagetop