少しの背伸び
ピンポーン、と聞きなれた家のチャイムが鳴って、私は急いで玄関に向かった。
またお兄ちゃんに、相手を確認してから出ろって怒られるな、と頭の隅っこで思ったけど、そんなことどうでもいい。
玄関でサンダルを適当に履いて、ドアを急いで開ける。
「わ、びっくりした。早いね相変らず。こんにちは、はるちゃん」
にこり、と扉の先に立つ彼の笑顔に心臓を打ち抜かれたのはこれで何度目か。
「こ、こんにちは。いらっしゃいませ…相沢くん」
相沢 時雨くん、21歳。お兄ちゃんの友達で、私の好きな人である。