お前は必ず、俺を好きになる。
【渚side】
「柚葉おそい」




「え、そんなことあたしに言わないで」




部活がオフになったから柚葉と一緒にいようと思って急いで帰ってきたけど家に柚葉はいなくて。


すぐ帰ってくるだろ、と思ってかれこれ3時間。7時を過ぎた今でも柚葉は帰ってこない。




「もりもっちゃんに雑用おしつけられてたけど、それが何だかは聞いてないもん。電話してみればいいじゃん!」




純は出かけ、家にいる彩葉と俺は口げんかばかり。

こういうとこだけ柚葉に似てる。




…余計なとこだけ似るなよ。




「あ」




手元のスマホがブブッと震え、バッと確認すると一毅からのメッセージだった。




「……」




「なんだ、柚葉じゃねえのかよ。って思ってるでしょ」




ごもっとも。彩葉に心を読まれたのは不本意だがまあその通りだ。




「うるせえ」




彩葉から目をそらしスマホを見た俺は、次の瞬間固まった。




「は……?」




「なによ、一毅なんかあったの?」




違う。一毅じゃない。




「……行ってくる」




「え、どこに!?」




「晩飯作っとけ」



「ちょっと渚くん!!」




バタンと乱暴にリビングのドアを閉めた俺はそのまま玄関も飛び出す。



コートも着ずに外に出たから寒い。でもそんなことより……




‟柚葉が元カレと歩いてるんだけど” という一毅のメッセージが頭をはなれない。




「くっそ」




柚葉に元カレがいたなんて知らなかった。でもそれより…そいつと一緒にいるということに俺はイライラしている。



「渚くん?」




「は……?」




急に傘が差し出されたと思ったら、そこにいたのは柚葉の友達。確か名前は……莉子。




「何やってんの?こんなとこで傘もささずに」




「柚葉みなかったか」




「え、ユズ?あ、そういえばさっき隼人の家の近くにいた気がする」




ハヤト、というのはおそらく例の元カレだろう。




「そいつの家どっち」




「たしか神社の近く」




「さんきゅ」




俺はまたも走って神社に向かった。

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