夏、夢、そして君。

あぁ。
やってしまった。
本当はこんなこと言おうなんて思ってなかったんだ。
本当は未来のスカート姿、すごく似合ってたんだ。
すらっとしてる脚が見えてすごく可愛かったんだ。
早口でまくし立ててその場を立ち去るのは昔からの未来のクセ。
泣きたい時のクセ。
俺はきっと未来を泣かせてしまった。
俺はなんてダメなやつなんだ。
未来だって女の子だ。
そんな事は充分わかっている。
アイツは野球チームの中で1番細い。
わかってるんだ。
あいつが女の子なのは。
でもゆるせなかった。
アイツが俺達の成長について来れないことが、しかも女の子っぽくなろうとしてることが。
俺のわがままが未来を泣かせた。

｢ちょっと！斉藤くん！未来になんてこと言ったの！？｣

｢お前が未来にあんなことしたのか…。未来、嫌がってただろ？未来はあんなの好きじゃないんだから。｣

｢うっ…。ごめん…。｣

しばらくすると未来はいつもの明るい笑顔で教室に戻ってきた。
目元が少し赤くなっていることに気づいたのは誰もいなかった。